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「じゃあ、莉子もその組織にいるの?」
里桜はタサナに聞いた。
「まあ、その確率が高いってだけだけど。貴方達が遭遇したウサギの仮面を被った人物のことを考慮するとその仮説は正しいものになってくる」
タサナは五冊のうちの1つをとりだしメモをしはじめた。
「わたしたちはこれからこの組織に対して“調整”を始める。死んだとされる人間が生きていて世界に支障をきたさないわけがない。この支障に対し、むこうは無所属の能力者を殺して均衡を図ろうとしているわ」
話ながらも生きている死人を探す手は止まらない。
しばらく状況を理解できず放心していた里桜と春樹もそんなタサナにならい話に耳を傾けながらメモをとる。
「もうすでに無所属狩りは始まっている。今まで鳴りを潜めていたのだから我らの方が出遅れている。その分取り戻さなければ無所属を狩り終えてしまうぞ」ジャンはそう言う。
「なら俺らはどう対抗するんだ?」
春樹はタサナとジャンを交互に見た。
「できれば奴らを止めたいがむこうにだって強力な奴らがわんさかいる。最終目的というなれば奴らを止めるより殺すことに近い。奴らを止めても奴らの存在事態が世界に支障をきたすからな」
ジャンは不敵に笑った。
その言葉に少しため息を付き、残念そうな顔をしてタサナは言う。
「本当は手なんか下したくなかったのよ。でもあの組織の存在が本当に世界に支障をきたすのなら…そう思うわ。殺す覚悟をしなければ」
「さあ。はやくメモってちょうだい。しなければいけないことが山ほどあるの。それにまだこの案件は重要機密よ。スパイがどこにいるかさえわかったもんじゃないわ。いまここにいる私たちの間で交わされた言葉は秘密でなければならない」
タサナはすこし冷めた声で最後の言葉を紡ぎだすと、胸ポケットからジャックナイフを取りだし急に消えた。
3人はタサナが消えたことに特に狼狽える様子もなく動じもしない。
静かな暗闇の空間に鉄仕様の床を蹴って走る足音が二組聞こえる。
次第に幾分か後方の足音の方が早くなっていった。
ついに後方の足音が、踏み込むような音を立て鉄の床を叩いた。
その音は声高な音色を奏で、響く。
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