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影は顔をひきつらせて向けられた刃から出来るだけ離れようと顔を背けている。 「どこのモンだ?てめぇ」 さっきのタサナとはかけ離れたドス声が射抜かれるような睨みと共に発される。 「僕は、秘密管理者で…すが、タサナさんはお知りでないですよね?」 平然とした顔で自分の名前を口にする男が無性に気にさわった。 「てめぇが秘密管理者?ふざけんな。確かに新入りなのは知ってるが、てめぇが秘密管理者なんかじゃないことぐらいてめぇの反応でわかんだよ」 さらに本棚に押し付ける力を強くする。 「ぅ…何を言ってるんですか」 上司の横暴に困り果てる部下のような顔をするこの男が更に気にくわないどころか目障りになってきた。 「はぁ…そーかい」 冷めた目で男に対しそういうと、左手を首の後ろに回し首を鳴らす。 ジャックナイフを離すと右手を男の首から離した,,,,かのように見えた。 ジャックナイフが刃を下にし、床に落下する直前、左手で柄を逆手に持ち直し瞬時に左下から右上に切り上げた。 「ぐあぁっ」男は叫び声を上げ倒れこんだ。 「大の男が刃引きしたナイフ叩き込まれて叫ぶんじゃねぇよ。ガキがっ」 刃が通った軌道は胸を斜めに横切り右肩まで通っている。書庫内で所持できる武器は全て刃引きされたものだ。 刃引きしたナイフであれど相応のスピードがあれば切れる。 だが、それでも傷は浅い。 「くくっ。さっきは大分深くいったが叫ばなかったな。おい!ジャン!」 本棚の足元に崩れ落ちた男を見、無様さに嘲笑う。呼ばれたジャンは近くにいたようですぐに来そうな気配だ。 手に持っていたナイフを離すと血糊を振り払い懷に仕舞う。 「っ…」 呻いた男の小さな声を拾うとしゃがんだ。 「お?お目覚めか?言う気になった?」 ニヤニヤしながら男の顔を覗き込む。 山吹色を覗かせる目をうっすらと開き、男は問う。 「…何を、だ…」
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