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「なん…で…っ」
里桜も春樹の言葉に誘発されたように呟いた。
「なんでって、おれが殺ったからだよ」4人の数メートル離れた後ろの本棚に腰掛けた何者か。
「この声…」
春樹は何者かを睨むように声を絞り出した。
「おー。君ら生きてたんだ。大分と深く殺ったはずだったんだけど?」
軽く嘲笑ったようで殺気の篭った言葉が書庫の空間に響く。
「あんた、誰」
タサナは春樹と里桜を守るように前進してそう言った。
「あれぇ。秘密管理者のタサナ・ブリーはそこの2人を襲ったコードネームの1人である暗殺のコードネーム:Aを知らないのかなぁ」
酷く小馬鹿にした口調はニヒルな笑みを零した。
「さっきのコードネーム“C”はお前が殺ったんだな」
ジャンが聞く。ジャンの左手は制服のズボンの左側のホルダーに静かに伸びていた。
「あぁ。裏切り者は消すのが唯一の掟だからな。おれはその命を遂行しに来ただけ。何も争いには来てないんだよ、ジャン・ギューリオ」
ウサギの仮面の下の表情は終始嘲笑った笑みを浮かべている。
だからかAがジャンのそばに移動したことに気づくのに数秒かかった。
ホルダーに静かに伸びた左手にAの左手がかざされ、ジャンが固まったかのように息を殺しているのがわかる。それだけジャンも慎重にAの力量を測っているように見えた。
「まーまー、そう殺気立つなよ。お気楽にいこーぜ。ではでは、国際警察の皆さん。またお会い出来るのを楽しみにしております」
Aはそう言うが早いが指を鳴らすと消えた。
まるでその場には元から存在していなかったかのように忽然と。
ニヒルに染まった笑みと声が春樹たちの脳に焼きついて離れないことだけが奴がここにいたことを示していた。
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