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“こちら田原。Aらしき死体を発見。そばにはバイクの止められていた跡が残っているため、Aを殺害した人物はバイクで逃走している可能性が高い!どうぞ” 脈がないか首筋に指をあてがった。 かすかに脈打っているのがわかるがこれでは保って数分の命だ。 “…了解。全隊に告ぐッ!侵入者はバイクにて逃走中!南ゲートをすぐさま固めろッ” 春樹の声が里桜の耳にこだます。 スクっと立ち上がるとその場をすぐさま応援に来た部下に任せ、身を翻して消えた。 空気を切り裂くように南ゲートへ突っ切る。この方法以外にも移動手段はあるのだが、そちらは遠くに移動する時に使うほうが利便性がある。たったの数キロでは頭を疲弊させるだけだ。 そうして突っ切った先には数多のライトに照らされ姿を晒されている男がいた。バイクに凭れかけ、なす術なし、といった様子だ。 どうやらこの男が南ゲートに向かっていた敵らしい。男の周りには防衛機関の面々が構えている。一触即発の雰囲気だ。男の数メートル離れた前方には春樹がいた。 春樹の隣に音もなく滑り込む。 「単独行動は控えろ、アホ」 男の青い瞳から目を離さず、そう言う。 「アホは言い過ぎでしょ。おかげでAが殺されてたことが分かったんだから多めに見てよ」 負けじと男の瞳を睨みながら言い返した。 「逆にお前が殺られたらどうすんだ」 「っ…それはっ!」 「まぁ、いい…。で?お前何者だ?」 春樹の一度閉じられた目はもう一度青い瞳を鋭く見据えた。 「…ぇ?あぁ、俺のことか」 気怠そうな声に猫背気味の全身真っ黒な男だった。そのせいで暗闇でも浮き上がりそうな銀髪とブルーの瞳が印象深い。 首筋に手を当て、ボキ、と数メートル離れた春樹でさえ聞こえる音を鳴らしながら春樹の目を見返した。 「俺は“C”を消しに来た“A”を私情で迎えに来たのさ。まぁ、命令は殺すことじゃぁ無かったが…いやぁ、ね。つい欲が湧いてな」 男は春樹でさえ悪寒が走るような笑みを浮かべた。
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