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「じゃあ君が私情の為に殺ったの?」 里桜は冷めた目で、フードを被りこちらを見ている男を見つめた。 「何蔑んでんの。君らだって僕らを殺そうとしてるだろ。この世界に足を踏み入れた瞬間から殺人なんて狂気でも何でもない。ただの日常会話と一緒。平和な凡人が常に殺人が起きていることを知らないだけだろ」 「あぁ…確かにそうだな」 春樹は苦笑しながら賛同した。 「けど…“私情”で殺ったんだろ?」 春樹は男に負けず劣らず悪どい笑みを浮かべた。 「不法侵入に殺人。逮捕な」 ニヤリ、と春樹が笑った瞬間に足で地面を蹴り、男の側に立つ。 男の手首を拐ったはずの春樹の手は空を掴んだ。 「ちっ…」 「残念ながらまだ死ねないからな。お前らの“紅”、もらった時に死んでやるよ」 南ゲートの鉄柵の上に乗った男はそう言うとヒラリと身を翻しゲートの向こうに消えた。 「“紅”…?」 鉄柵の1m外側に存在している網すらものともせず去っていく姿が見える。 数秒遅れて盛大な水音が落下音の代わりに辺りに響く。 それを皮切りに周りにいた防衛機関の隊員たちは一斉に深く息を吸い込んだ。前の方にいた隊員など倒れ込んでいる。 春樹と里桜の後ろに控えていた部下たちも多少なり浅く息をしていた。 「どうした」 「里桜班長、よく平気でしたね」 「何がだ」 里桜は不思議そうな顔をした。 「息がしづらくてあと少しでもあいつがいたら俺ら失神してましたよ、酸欠で」 「…?」 里桜は頭にハテナを浮かべた。 「多分、あいつ。重力系の空間支配能力者だ」 ゲートの鉄柵向こうまで確認を行なっていた春樹がゲートの向こうを指しながら言った。 「網も無効化されていた。だから奴の侵入を検知できなかったんだ」 「重力系か、、初めて出会った」 「おそらく、、現在だと世界で5人ほどしか確認されていないかと、、、」 里桜の側近の部下である、ヤイトが里桜に付け足す。 「だとしたら奴はそのうちの1人か」 「いえ。確認されている重力系の能力者は全員女性です。ですから登録すらされていない非管理保持者ではないでしょうか」 「、、或いは死ん「春樹。」 南ゲートのこの現場で、側で部下たちが態勢を立て直し後処理に回っている最中、誰に聞かれるかもわからない状況で口に出かかった春樹を睨んだ。 「っ、、、いや。そうだな。ヤイト、猫がここから西に位置する廃ビルでさっき奴が言っていたCの死体が上がっている。その身元調査と共に非管理保持者の中からそれらしき人物の洗い出しを。何人割いても構わない。徹底的に洗い出してくれ」 「Yes,sir.」
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