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緩い波のかかった真っ黒の髪。 纏うドレスは少女に似合う淡い桃の絹。 ただ、その器に生気が無いのは瞳に力が欠けているからか。 「姫」 呼ばれても、声は返らない。 心が無いのか祈りの姿勢を崩して、少女はただ立ち上がるだけ。 「参りましょう」 差し出される手に自分のそれを重ね歩き出す。 宮を出ようとする寸前、振り返り見たのは注ぐ一筋の明かり。 崩した祈りに、少し似てる気がして名を付けた。 落胆と絶望と裏切り...... もう、ここにも足を運ぶことは無いだろう。 祈りは、脆くも崩れ去ってしまったのだから。
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