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一国の姫。
今日は、その姫が別国に嫁いで行く日。
民衆、城の住人、誰もがその門出を盛大に祝っている。
浮かれた雰囲気が無いのは本人を始めとする、その近しい空気だけ。
「さ、姫。馬車に」
促されて少女は馬車に乗り込む。
当事者の少女はまるで嫁いで行くのが他人事のように、顔つきはまるで傍観者。
それも、そのはず。
心を消してしまった少女はその自分の様子を、どこか客観的に見るようになった。
やがて馬車が走り出すと、民衆のざわめき、紙吹雪、パレードの中を抜けて国の外へと走り去って行った。
薄く窓から差し込む明かり。
『絶望』と名づけた明かりをそれでも探してしまうようで、落胆を象徴としたそれを無意識に求める自分にまたも愚かな自分を知り、それでも何度でも自分はそれを探して、描いて、求めるのだろうと、まるで、逃れられない事を知らしめられたようで、己を心で罵った。
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