序章・前編 死して私は人となる。

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思いの外、死とは、あっさりとしたものであった。 ふと、誰かが出演している戦闘ものの、映画の台詞を思い出す。 `大丈夫だ。痛いのは一瞬だ。´ それを見ている時は、嘘だと思っていた。 そんな死に方、極一部にすぎない。そう思っていたし、今もそう思っている。 しかし、まさか自分が、そんな死に方をするとは思わなかった。 心臓を一突き 刺された一瞬の、肉を貫き、自身の血が噴き出す感覚。 内臓が傷付き、血が食道を通り、込み上がってくる感覚。 例え、あの時私が、何をしていて、誰に刺されたかを忘れたとしても、それだけは忘れない。 そう、あれは一種の恐怖 死んでもあの瞬間だけは怖い。 死してなお、私は死に恐怖する。
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