103人が本棚に入れています
本棚に追加
気付いたら、私は声をあげていた。
「おぎゃあ」
と。
何が起きたのか、理解しがたい状況だった。
私は生きた。
違う存在として。
ただ、今は息をするのに精一杯だった。
私は赤子へと戻り、違う親のお腹に宿った。
輪廻転生。
死んでもその魂は朽ちる事無く、違う生き物、違う存在へと転生する。
それを、私は目の当たりにしたのだ。
しかし、
自我・知識・記憶を持っている0歳児。
………。鳥肌モノだ。ちょっとしたホラーである。
母乳を飲んだり、おむつを替えてもらったり。
これには、参りましたよ。恥ずかし過ぎるでしょ。
けれど、おかげで、私はどれほど、人によって生かされているのか知れた。
裏返せば、私は彼等に愛され、生きているということだから、少しだけ嬉しかった。
しかし、子供に戻って困った事もある。体は乳児だから、器用さが必要な事は一切出来なかった。
立つ事さえ簡単ではない。
けれど、まるで「焦らなくてもいいよ。」というような優しい両親の愛情に包まれ、ひねくれる事なく、私は育った。
最初のコメントを投稿しよう!