序章・前編 死して私は人となる。

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気付いたら、私は声をあげていた。 「おぎゃあ」 と。 何が起きたのか、理解しがたい状況だった。 私は生きた。 違う存在として。 ただ、今は息をするのに精一杯だった。 私は赤子へと戻り、違う親のお腹に宿った。 輪廻転生。 死んでもその魂は朽ちる事無く、違う生き物、違う存在へと転生する。 それを、私は目の当たりにしたのだ。 しかし、 自我・知識・記憶を持っている0歳児。 ………。鳥肌モノだ。ちょっとしたホラーである。 母乳を飲んだり、おむつを替えてもらったり。 これには、参りましたよ。恥ずかし過ぎるでしょ。 けれど、おかげで、私はどれほど、人によって生かされているのか知れた。 裏返せば、私は彼等に愛され、生きているということだから、少しだけ嬉しかった。 しかし、子供に戻って困った事もある。体は乳児だから、器用さが必要な事は一切出来なかった。 立つ事さえ簡単ではない。 けれど、まるで「焦らなくてもいいよ。」というような優しい両親の愛情に包まれ、ひねくれる事なく、私は育った。
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