始まりは唐突に

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「まず、神は不老ではありますが不死ではありません。存在を留める為の器としての体に限界があるからです。ですから、自分の死期が近付いた時点で新たな器を作り、その器に記憶と力を移し変えることで神は代替わりを行うのです。その時、古くなった器は役目を終え、その存在を維持できなくなり、霧散します」 「ですから、私は11代目の神なのですが、初代の神でもあるわけです。神は器を移し変えることで代替わりを行うため、この空間に存在する神は常にただ一つ、となるわけです」 「つまり、神様っていう存在、意思は絶対なものだけど、体は消耗品みたいなものってことですか?」 「そのような捉え方で、問題ないと思います」 「でも、それだとまったく同じ人が体だけを取り替えてるってことになりますよね?さっきの、『私が~』って話とやっぱり矛盾してる気がします」 「やはり貴方は聡い方ですね。 実は、新しく創られる器にも自我が存在するのです。空っぽの器では、その存在を留めることができず、直ぐに消失してしまう為です。 ですから、厳密に言うと神の代替わりは、生まれ変わりの儀式でもあり、継承の儀式でもあるのです」 「なるほど…」 「これが、神の世代交代の全容となります。何かご質問はありましたか?」 「いえ、大丈夫です」 知れば知るほど、神様という存在は常識外れだ。 「また一つ空さんのことを知ることが出来て良かったです。 次は、何で僕がその創生の廬にいるのか。それを教えてください」 とりあえず、此処がどんな場所でそれに関する話も教えてもらったのだけれども… よくよく考えると、今神様の家にいるわけだ。絶対これは、とんでもないことに巻き込まれているに違いない。 「此処が空さんの家っていうことは、僕が自分で来た記憶がない以上、貴女に連れてこられた。ってことですよね?」
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