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「その通りです。訳あってお呼びさせていただきました。
改めて、突然のお呼び立てを謝罪します。このように急になったことにも、理由があるのですが…」
「突然な上に驚きの連続で、正直頭が回りきっていないのは確かですけど、それを迷惑だとは思ってません。よっぽどの事情があるんですよね?」
そう尋ねると空さんは、これまで浮かべていた微笑を消した。そこにあるのは、優しげな隣人としての顔ではなく、強制力-言霊-を行使した時と同じ、神としての顔だった。
「貴方にお願いがあるのです。それは先程の件とも関係のあるお話です。そして、貴方の最後の疑問の答えでもあります」
最後の疑問…
自分はどうしてしまったのか?何に巻き込まれているのか?いつも通りの日常に帰ることができるのか?
「その、お願いっていうのは?」
「…お話をする前にもう一度だけ、確認させていただきたいことがあります。貴方はここで目覚める以前のことを、どこまで覚えて
いますか?」
「覚えているもなにも、普通に夕飯を食べて、自分の部屋で寝たっていう、いつも通りの日常しか思い出せないんですけど…」
だからこそ、この状況が不思議でならないというのに。今の質問にはどんな意味が?いつも通りに寝ていたところを、何かしらの原因があって呼び出された。そういうことではないんだろうか?
「思い出せませんか?貴方の最期の記憶はそこではないはずです。少しずつ慣れ始めた高等学校への通学路、節目の季節に相応しい爽やかな天気…」
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