始まりは唐突に

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そうして惚けている間にも名も知らない美人さんー便宜的にAさんとでも呼ぼうかーは、ぺたぺたと体を触ってきたり、目の前で手を振ってきたりと、なにやら過激なスキンシップを受けた気がしたが、終始されるがままにしていた。 しばらくして、何の反応も示さないこちらを訝しんだのか、Aさんは顎に手を当て何やら思案顔に。 ああ、そんな何気ない仕草まで絵になるなぁなんて未だに惚けていると、ややあってAさんは拳を硬く握りしめると、その拳をがら空きの腹に向かって突き出してき…!? 「はぐっ!?っううぇあ!?」 瞬間。鋭い痛みと共に、肺の中の空気を無理矢理押し出され急激な息苦しさが襲ってきたって、なんだコレ、どういうこと!? 余りの痛みにその場で転げ回りながら、声にならない呻き声を発していると、頭上から何故か安堵したような声が聞こえてきた。 「良かった。どうやらどこにも問題ないみたいですね」 なんて。 この苦しみ様を見て何処に問題がないように見えるのかと、喚き散らしてやりたいところだったが余りの痛みと息苦しさに声を発する事すら出来なかった。 流石に罪悪感を感じたのか、Aさんが背中を摩りながら、助け起こそうとしてくれたものの、呼吸が整う数分後まで顔を上げることすらかなわなかった。 …理不尽過ぎて意味が分からない。
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