始まりは唐突に

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「どうですか?落ち着きましたか?」 ようやく息が楽になったところでAさんの、こちらを労わる柔らかな声が聞こえてくる。 「んヴっ…はい、なんとか」 つっかえながらも、反応するとAさんは柔和な笑みを返してくれた。 「良かった。看たところなんの異常もないのにまったく応答がなかったので、少し手荒な確認をさせていただきました。申し訳ありません」 確かに、意識があるにも関わらず、Aさんからの呼びかけを無視していたのは間違いない事実。その上、そうなった理由がAさんに目を奪われていたからって、よくよく考えると非常に失礼なことをしでかしていた訳で… そう思うと急に恥ずかしいのと、申し訳ないので体が熱くなってきた。数分前の自分を殴ってやりたい。 「いや、こちらこそすいませんでした。声をかけてもらってたのに、無視しちゃってたみたいで」 「そのようなこと、お気になさらず。ところで体の方はいかがですか?先程申し上げたように、私の方でも少し看させてはいただいたのですが」 …この人良い人過ぎる。少しやり過ぎな安否確認だったとは思うけれども、こんなにも心配してくれるなんて。 改めて、体の調子を確認するも、何処も問題なく動くし意識もはっきりしている。普段よりも体が軽いくらいだ。 「特に問題ないですね。いつもよりも健康なくらいです」 「そうですか。どうやら招霊(しょうれい)は無事に成功したようですね。なによりです」 …しょうれい? なにやら聞き慣れない単語が聞こえたものの、Aさんの様子を見るに、どうやら満足してもらえたみたいだ。
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