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Aさんとの会話が一段落したところで、ようやく周囲に目を向ける余裕ができた。Aさんとの出会いやらなんやらが衝撃的過ぎて、正直な話、今自分の置かれている状況を把握出来ていなかった事に気付く。
よくよく周りを見渡すと、意味不明だった。
今立っている?この場所は、どこに果てがあるのかも分からない、見渡す限りの白一色の空間で、目の前でニコニコしているAさん以外の人影は誰も見えない。
今更ながら、この状況の異常性に気付く。ただ、Aさんがこちらに危害を加えるような人ではないということだけは、何故か断言できる。
・・・
絶対にだ。
にしても、ここはいったい何処で一体自分は何に巻き込まれてしまったんだろう?
「あの~、一体ここは何処なんですか?起きる前の記憶があやふやで…」
なんにせよ、明らかに異常なこの状況にいっさい動揺していないように見えるAさんなら、この事態を説明してくれるだろう。多分。
「ああ、申し訳ありません。貴方の無事を確認することが一番の優先事項だったので、その他のことを何から何まで失念してしまっていました。
…そうですね。此処が何処で、貴方に何が起こったのか。それを説明する前に、まずは自己紹介をしましょうか。これからするお話を聞いていただく前に、まずは私のことを理解していただく必要がありますので」
言われてみれば、先程からAさんなどという勝手な呼称をつけていたので、さほど気にしていなかったものの、自分は今会話している相手の名前すら知らないのだ。
こういう時は、頼み事をする方が先に名乗るべきだろう。
「確かに自己紹介がまだでしたよね。僕の名前は…」
「存じ上げております。 雪野(ゆきの)真樹(まさき)さん。ですよね?」
「…え?なんで、僕の名前を?」
これには驚きを通り越して、不審さを感じた。何故初対面のはずの相手に名前を知られているのか。
その答えは予想の遥か上をいくものだった。
「こうしてお会いするのは初めてですが、貴方のことは存じ上げております。
改めて、初めまして。私は貴方方でいうところの地球という星が存在する世界。そこの神を務めさせていただいている者です」
そう言ってAさんは今日見た中でも一番綺麗な、はにかんだ笑顔を見せた。
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