始まりは唐突に

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「信用していただけたようでなによりです。もっと楽にしていただいて結構ですよ。それと私のことは気軽に神と呼んでください」 いやいや、この人は何を仰っているのだろうか。過去に類をみないほど緊張しているこの状況で、楽にしろとか。それに敬称もなしに呼び捨てにしろだなんて。 「そんなこと、畏れ多くて出来ません。」 「人の子、いえ、貴方の世界で生きる者は皆等しく私の子です。 …息子に冷たくされるというのは辛いものですね」 うぐっ。 「失礼しました。私、こうして人の子と話すことなど、これまでに無いことでしたので、取り乱してしまいました。どうかお気になさらず。 …うぐっ、ふっ」 「うわあぁあ!わ、分かりました!楽にします、させていただきます!」 神様、ここで泣いてしまうんですか!? 目上の人を敬ったら、その人を泣かせてしまいました。って、どういうことだよ。神様、メンタル弱過ぎです… 数分後、慌てて宥めた成果か、弱々しいながらも神様は笑顔を取り戻してくれた。 何はともあれ、今の一幕で神様に対するイメージがまた一変したことは確かだった。若干重く感じる程の好意を向けてくる神様に、何だか親近感が湧いてきた気がする。 でも 「それで、さっきの話なんですけど、呼び捨てっていうのだけはちょっと厳しいです。 恥ずかしい話ですけど、人を呼び捨てにするのに慣れていないもんで」 こればっかりは、譲れない。会ったばかりの相手を呼び捨てにするなんて、神様どうこう関係なく、無理。
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