『それは、困る。』

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    「笹の葉さーらさらー…♪」     7月7日、七夕の夜。 曇り空にも関わらず、片桐さんが小さな笹を持ってやって来た。 イベントごとが好きなコイツは、俺の意見も聞かずに窓際に座り込むと、持ってきた笹の飾り付けを始めた。   「片桐さんさぁ…。」   「んー?」   「夢中になり過ぎ。七夕したいんだったら自分んちですればいいじゃない。」   俺のことをほったらかしにして黙々と飾り付けをする片桐さんに、少しムッとしてしまった。 だってわざわざ来たくせに、全然甘い雰囲気になりゃしない。 仮にも恋人なんですけど。   「だって、賢太郎と一緒にお願い事したかったんだもん。」   可愛い笑顔を向けられ、拗ねた気持ちはどこかへ飛んでいった。 甘いな、俺。  
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