『それは、困る。』

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  「なになに…」   『賢太郎に演技が上手くなったって褒めてもらえますように!』   力強く書かれた短冊に、こっちが照れてしまう。 でも…。   「それは、困る。」   「え?」   ボソリと呟いた声に、片桐さんが不安げに顔を上げた。   「あんまり演技、上手くなり過ぎても困るよ。」   「な、なんで?上手い方が良いじゃん。」   「だって、上手い役者と良い役者は違うじゃん。上手い役者として色んな作品に出されるより、良い役者として俺の相方で居てほしい…なんて。」   ポロリと出た本音。 片桐さんが客演する度に距離が離れていく感じがしていた。 片桐仁の取扱説明書は俺しか持っていないはずなのに、片桐さんは俳優として有名になっていく。 俺の隣から、どんどん遠ざかっていく。  
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