そのマラ最低故に…

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 彼とは気晴らしに出掛けたライブハウスで出会った。  ステージ前の柵によじ登る、赤いスパイクヘアーでバンドTシャツに革パンに三連のピラミッドスタッズのごついベルト、首元にはシドネックチェーンにスパイクのネックチョーカー、足元はジョージコックスのラバーソール…私の好みどんぴしゃり!!少し年はいってるみたいだけど…そんな男がステージからダイブ…彼が舞い降り…  ドサリッ!!!  私の目の前に落ちた…誰にも受け止めて貰う事なく… 「ってえな…おい!!」  流血する額を押さえながらその男はヨロヨロ立ち上がる。 「お前…ギャハハハ!!!ばっかだな…誰もいねえところに飛び込んでどうすんだよ。」  仲間と思われる男性から指を指されて笑われていた。 「るせーな…ブハハッ!!」  アルコールが入っているせいか流れる血の量が半端ではない。  私は思わずヴィヴィアンウエストウッドのウエストポーチからハンカチを出して、血を流しながら豪快に笑う彼に手渡す。 「ああ…お嬢さん。サンキュな!」  彼はハンカチを受け取ると、少し屈んで私の顔をジッと見た。 「オマエ…ヤベー。まじ可愛い。」  そういいながら、傷口をハンカチで押さえて顔をクシャッとして微笑む。  私は恥ずかしくて下を向いた。  どうしようドキドキしちゃうじゃない…  彼は暫く私の隣で跳びはね、叫んでいた。  途中で彼は大音量の中、私の耳元で言う。 「終わっても帰るなよ…打ち上げ、オマエも参加しろよ!いいな、俺ちょっと行ってくるから…」  彼は私の頭をポンポンと撫でて軽くウィンクをして去っていた。  トリのバンド…知らないバンドだった。  私が知らないだけのようで、登場の瞬間他のバンドの盛り上がりとは格段の差を見せた。  そして先程の彼がキブソンの黄色いレスポールをもって登場したのだ。  ステージの彼と目が合うと、彼はまた軽くウィンクする。  そして、額の傷から血液とキラキラな汗を流しながら演奏する彼がカッコよく見えた。
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