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「……ええ、お兄さま」
フラウローゼは憤りを隠さない兄の顔を直視できずにうつむいた。
頭上に、深いため息がおりる。
「まったく、お前はどうしてそうなんだ。明朗さというものが全くない。商人の娘ならもっと社交的であるべきじゃないのか?」
「…ごめんなさい」
「もういい、聞き飽きた。だが今回ばかりは好都合だ。なにせ相手はお前の顔も性格も知らないのだからな」
「相手…って、お兄さま」
「ああ、さっきも言ったが魔族のことだ。商いのことは何も言わず、娘をひとりよこせと言ってきたらしい。喜べ、お前もようやくこの家に役立つ機会に恵まれた」
「そんな……」
兄はおもむろに、妹の髪をつかんだ。
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