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全部の場所を留めるのに十分ほどかかっただろうか。ひとまず狩りの衣服が出来上がったところで女子三人「ふう」と溜め息が揃った。
「仮の衣服の完成、か」
声に出して、私は気付いた。一仕事終えてやれやれなんて思っていたが、これは仮の服なのだ。
起き上がったシュリの格好を改めて見ると、グラビア雑誌に載りそうなくらいだ。センスでなく露出の点で。良く言えば灰緑色のチューブトップにタイトスカートといったところだが、贔屓目無しなら何かのコスプレ。悪く言うなら変態だ。
「柴田、もう何枚かマット取ってきてくれる?」
「任せとけ! 黄太……は行けるか?」
「……力仕事は、任せるよ。僕は、僕の出来る事を、しよう、かな」
息も絶え絶えの黄太を置いて二人はさっきの勢いそのままに体育館に走り出して行った。このおしゃべりの出来る事がほかに何かあるのか私にはよく分からないけど、黄太はシュリを見ないように背を向けて、ふらふらと校舎に歩いて行った。
「ううん、まだ恥ずかしいなあ……」
見られていないとはいえ、ほぼ下着のような格好をしてる隣を男が通っていくのだから、シュリにすればたまったものじゃない。
「マットを追加で 持ってきてもらってるから、それを合体してポンチョみたいにしよう。そうすればいくらかマシだろう。だから縮こまるのをやめろ。谷間が丸見えだぞ」
ますます小さくなった。そうすると乳が寄って余計に……まあいいか。
「ねえ百合。私、どうしちゃったんだろう」
「……ごめん。私にも分からない」
「そっか……そうだよね」
パニックにならなかったというだけで、シュリは混乱していた。私だって混乱してるんだから、当人の心境は推して知るべしだろう。
暫くすると柴田と緑山が帰ってきた。二人とも後ろ歩きでゆっくりと来てくれているのだから、良いクラスメイトに恵まれたと思っておくことにした。黄太が帰ってきたのはそれからずっと遅れて、シュリのポンチョが完成してからだった。
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