彼女は「巨大化した」。

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 ……となれば、「『住』は保留だよね」  私が言うまでもなく、緑山が呟いた。その表情は重く、皆が一様に俯いた。 「今の私が入れる家なんて、作れないもんね……」  がっくりうなだれるシュリ。パニックこそしないものの、その心境は穏やかでは無いだろう。あんな辱めのような格好で野晒しで寝なければならないと宣告したのだから、空気はどうしても重くなる。 「……つーか、元の大きさに戻る方法考えた方が良いんじゃない? このまま過ごすってのは可哀相だよ」  突然橙子ちゃんが鼻を鳴らして言った。柴田も同意して「そうだそうだ」と囃す。  その柴田に乗っかるように、黄太。 「流石は河内橙子さん! 間違いなく、至極もっともな意見だ」  黄太の独演をスイッチに、橙子ちゃんの表情が青くなった。黄太が手放しに賛辞を送るのは、反論の前触れである事を彼女は知っている。 「是非ご意見を拝聴したいね。どうやったら我が幼馴染みが戻れるのかさ」  言葉だけではきつい物言いだが、黄太は怒っている訳では無い。あいつはこういう言い方しか出来ないのだ。  言われた方の橙子ちゃんは申し訳なさそうに、 「……だよね」と言って頭を掻いた。  黄太だってシュリが元に戻る方法を考えたに違いない。そして現時点では、元に戻る方法はおろか巨大化の原因さえ分からなかったのだろう。ならば、と黄太は考えたのだ。元に戻れないのなら、せめて人並みの生活をおくれるようにしたい、と。  無駄に大仰な言い回しをするあたり照れ隠しをしているのかもしれない。と思ってすぐに、それは無いなと否定する。あいつがその心境を大袈裟に言えなかっただけだ。  議題に戻ろう。私達がすぐに準備出来るのは『衣』か『食』か。 「それなら『食』じゃないかな」  また緑山だった。まあ妥当だろうと皆が肯定する前に藍場さんが噛み付いた。 「今日の分はともかく、明日明後日の保証はあるのかしら」  ううむ、と皆が唸る。  確かに食べ物は一番早く準備出来る。けど恒久性は?  最悪着る物は一着あれば間に合うが、食べ物はそうはいかない。しかも巨大化したシュリが食べる量は未知数だ。  いよいよ厄介になってきたぞ。
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