壬生狼=新撰組

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土方の眉がピクッと動いたのを見逃さなかった。 これはあれか?キレさせちゃった? 逃げた方がいいかな... 言っちゃったものの怖い。 「ほぉ。さすがいい度胸してるな。 俺はここで副長をつとめる土方歳三だ。 どんな理由で旅をしてるのか知らないが、ある奴の小姓をしてみないか?」 また怒鳴られなくて良かった。 良かったけど... 「........はぁ? いやいや。意味が分からないんですけど。 小姓をなんでこんな旅してるような奴に頼むんですか? 普通に考えておかしいでしょ。 小姓したら何か私に得があるんですか?」 突然わけのわからないことを言い出す土方は本当に偉い奴らしいが、それは"ここでは"って話なはず。 まだ部外者の私には通用しないと思うんだけど..... コイツはアレだ。顔だけで世の中を渡ってきた奴だ。 そうに違いない。 誰もがイケメンに弱いと思ってるんじゃねぇぞ! 「そうだな。引き受ければそれなりに給金は出るぜ。 断れば斬る。」 斬るって.....完全に自分に従わせる気満々だよね。 「私はそう簡単に斬られませんよ。 あなたみたいな簡単に殺意むき出しにするような奴には特にね。」 簡単に斬られるつもりはないけど、斬られたってそれはそれで好都合だもん。 痛いのは私だけじゃないからね。 「まぁでも、給金が出るなら話ぐらいは聞きましょうか。 私にこだわる理由も合わせてお願いします。」 土方の話し方はとにかく私をイライラさせる。 話の主導権を完全に握られるのはムカつくけど、給金が出るなら少しぐらい考えてあげてもいいかな。 だってこんな私みたいな性別とか出身とかいろいろ怪しい奴を雇ってくれるところ探すの大変なんだもん。
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