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「天然理心流だと!?俺が入門する前ってことか?」
驚く土方さんの声から察するに、この人も同じ流派の人なんだ。
自分の流派今知ったけど。
「えぇ。そうです。
確か権助が10才で、私が12才。
1年弱でしたけど、権助はとても強くて私は一度も勝てませんでした。」
そうなんだ....
全然覚えてないよ。
宗くんは分かったのに、なんでそれ以外のことは思い出せないのかな。
「子どもの頃共に過ごしたのは分かった。
ところで権助って呼び方はなんだ?」
そうだ。何故か呼ばれることに違和感はないけど、なんでそんな風に呼ばれてるんだろう。
「これですか?
記憶が無くて自分の名前が分からなかった彼に近藤さんが新しく名前をつけたんですよ。
名前がないのは不便だろうって。」
「へぇ。そうだったんですか。」
名前の由来に思わず反応してしまうと、今まで土方さんの方を向いて話していた沖田さんが私の方を向いて顔を近づけてきた。
「権助...もしかして....覚えてないの?」
「ごめんなさい。その話の通りだと、2年程前にまた記憶を失くしてしまったみたいです。
今わかるのは、名前と出身についてぐらいなんです。」
自分を覚えてくれてる人が見つかったのに、その相手を思い出せないなんて......
胸の奥がズキリと痛んで苦しいよ。
「これから思い出せばいいじゃねぇか。
ここには結城に名前をつけたっていう近藤さんだっているんだ。」
「そうですよ!これからごん...結城が小姓をやってくれるなら僕がたくさん昔の話を聞かせてあげますよ!」
土方さんがぐしゃぐしゃと私の頭を撫で、沖田さんがそれを直すかのように撫でてくれた。
優しいお兄ちゃんが二人もできたような感覚になり、胸の奥の方が温かくなるのを感じた。
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