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「ふーん。佐伯があきをねー......やっぱりか」
ことの顛末を手短に話した後のゆいの反応に驚きはなく、持論を確認したという感じである。
「えっ、何でそんな意味深な感じになるの。佐伯はやっぱり緊張してたらしいってだけじゃない」
「またまたー、あきだって少しはそう思うでしょ?あきが嫌いじゃないって言ったら嬉しそうで、挙げ句チューまでしそうになっといて」
ゆいはその可愛い顔に似合わぬニヤッとした笑顔を浮かべながら、ひじであきをつつく。
「ちょ、ちょっと、声大きいよ」
応援合戦を見ようとほとんどの生徒はグラウンド正面に集まっている。
いくらあき達がグラウンド横の少し離れた位置にいるとはいえ、近辺には数人の生徒がいる。
「聞こえないって、あきは心配症だね」
「だって、別にキスしそうになったっていうか......私の勘違いだと思うし。きっとからかわれたんだよ」
グラウンドでは各チームの応援団が整列し終わり、順番に応援合戦が始まっている。
「あっ、脇田だ!!」
「へ?」
「ほら、あき。今やってる3組の応援団の中にいるよ」
未練がましいかもしれないけれど、クラスも別な分、全校集会や教室の移動の時は必ず脇田の姿を探していたあきである。
それを知っているゆいも脇田を見つけると教えてくれたりする。
「ホントだ。しかも髪短くなってるね」
体育祭に向けて切ったのだろうか?益々爽やかな印象だ。
よく似合っているなと微笑むと、ゆいが驚いた顔で聞いてきた。
「あき?もしかして、ここんとこ脇田を見てなかった?」
「そうかなー。気付かなかった。でも、何で?」
「だって、脇田が髪切ったの先週だよ」
ゆいは何で知らないの?という表情。
「そうなの?ほら、クラスも違うし会わなかったんだよ」
「ううん。だってあたし達何度か廊下ですれちがってるよ。あきも気づいてただろうから敢えて言わなかったけど......」
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