体育祭の当日は。

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フォークダンスの軽快なリズムに乗って男女がクルクル踊る。 ここの所ずっとあきを悩ませていた種目だったけれど、始まってしまえばあっという間。 次々と変わっていく相手一人一人に『私と踊るの嫌がられたりしたらどうしよう』なんて、思う暇はない。 相手だってそんなどうでもいいこと一々考えてないと思えた。 佐伯との関係性が『単にブスって毛嫌いしてるわけでもないのかも』と変化したように感じたからか、あき自身の周囲を見る目も変わった気がした。 「お前、ちゃんと応援見てたか?」 佐伯の番が来て、開口一番がこれだった。 「み、見てたよ」 やっぱり、佐伯と踊るのは何か違う。心拍数だって増えてる気がする。 「嘘つけ、顔だけ向けて見てなかったろ」 図星を刺され焦る。 「なんで、そんなことわかるの」 だって、佐伯は応援してたじゃない。 「そりゃ、見てりゃわかるよ」 見てたって......私を? 無意識なんだろうか? この人、とっても自然に困ったこと言ってない? 「何で、はしっこなんて見てんの?」 佐伯はここに来て急に失態に気づいたのか、繋いだ手が焦ったようにビクリとした。 「別に......そこだけを見てたんじゃない。視野が広いからな。たまたま見えたんだよ」 何だかひどく言い訳めいた言葉を残して、ペアはまた交代となっていった。 私をブスと言ってるのはあいつ。 佐伯はモテるし、私を......なんて、普通なら有り得ない。 でも、もし本当にそうだとしたら、あの態度はなんなんだろう? ゆいが言う通りなの?それともうぬぼれ?
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