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「…ん…んん…」
俺はゆっくり目を覚ますとさくらさんが俺を見下ろしていた。
「……義之くん、気がついた?」
穏やかだが、やや悲しげな笑みを浮かべてさくらさんが話しかける。
「さくらさん…俺…」
なんだか妙な感じがする。声も変…というか聞き覚えがあるような。
「やっぱり義之くんで間違いないんだね?」
悲しげなような…嬉しげなような…複雑な表情で尋ねてくる。
「俺は俺ですよ。何を言って…」
俺はさらに違和感を覚える。俺から発する声は少女のようなソプラノボイスだ
「あのね…義之くん。今からボクが話すことをよく聞いて」
さくらさんが真剣な表情になりながら俺の身体を起こす。
あれ?さくらさんの手が大きく…
「今の義之くんは義之くんであって、義之くんじゃないの」
「…言ってる意味がわかりませんが…」
俺は顔を傾ける。目線も何故かさくらさんと同じ高さだ。
「順を追って説明するね。義之くんはボクが枯れない桜に願った理想の存在。…そしてその桜は枯れてしまった」
俺は無言で頷く
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