1 ~blackmoon rising~

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人は死にそうになると、周りの景色がゆっくりに見えたり、走馬灯を見たりすることがあると言われるが、それは本当みたいだ。 (あ……オレ死ぬんだ) 今日の出来事が頭の中を巡る。 皆が家に来て、オレが昼を作って。 食べたら麗香が買ってきたケーキを皆で食べて、薫をしばいて。 勉強をずっとして、薫をしばいて。 勉強が一段落したからって、皆で大富豪やって、薫をしばいて。 それで負けたオレが罰ゲームで、月明かりの中買い物するため外に出た。 そこで、奴と出会った…… 背後にいた城之内を振り返る。世界が酷くゆっくりだ。 振り返った瞳には、歪んだ笑みを浮かべる城之内と。 まさしくオレを殺すために振りかぶられた日本刀と。 何故だか不気味なほど赤黒い色をした、月が映った。 世界が急速に元の早さに戻っていく。 ヒュン――― 風切り音が、その場を支配した。 (あ、これは死んだ) 思考の余地なくそう思った。 その時。 ガッギィィィィン!! 唐突に視界の端に何かが割り込んできたかと思うと、城之内の刃を受け止めた。 「なっ……」 驚いたのは城之内も同じのようで、 「ほぅ!」 ギィン!と弾いて距離をとり、奴は叫ぶ。 「流石桐生家。良い番犬を飼ってるやないの。なぁ、レイ」 「城之内……大起!」 そう、オレを凶刃から救ってくれたのは茜……いや、この場合はレイ・ストームの方が正しいか。 「この……行動の意味を良く考えることだ城之内」 ストームの声は冷たく、硬く、そして暗く響く。 「まーまー、堪忍な、レイちゃん」 それとは対象的に底抜けに明るい声。目も、さっきの蛇のような瞳から、細い瞳に戻っている。 「今日のはほんのご挨拶や。こんなんでコロッと逝っちまう奴に、グループは継げないやろ」 何もなかったかの様に話す城之内。 (こいつ、ズレてやがる……) どうもコイツは世間と少し……いや、かなりズレていると感じる。そもそも考え方が違うのだ。 「またそんな戯言を……!」 今にも飛び掛かりそうなストーム。その手には小刀(ドス)が握られていた。 「やめときな、レイちゃん」 しかし。 そんなストームをみて城之内は。 「まだ、君じゃワイに勝てへんやろ」 さっきの蛇のような瞳を振り向き様に見せた。
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