1 ~blackmoon rising~

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ゾクッ……… 「くっ」 あの、人並外れた能力を持ち。どんな荒事にも動じないはずのストームが。 初めて気圧されていた。 (こいつ……それだけの相手だってことか) 震えるストームの手。こんな奴、普通の人間が勝てるわけ無い。 でも。 「待てよ……クソッ!!」 何故だか、無性に腹が立ってくる。ストームが……仲間が、舐められたみたいで。 「匠海君!?」 ストームも驚いている。当然だ、先ほど殺されかけたばっかだもんな。 でも。 振り替えろうとしない城之内に向かって、左手を構え、駆け出す。 震える足に心で鞭打ち、前へと駆ける。 何故だか、今ここで引いたら、大事なものを全て失う気がした。 「うぉぉぉぉ!!」 近付く距離。奴の背中まで……3……2……1……! 「千鳥……か?」 ボソリと城之内が呟く。 そして三度あの視線。再び世界がゆっくりになり、抜かれる日本刀。確かに早い。だが。 「……見えるっ!!」 無我夢中で左手を突き出す。そして。 ザン!! オレ達は正面からぶつかった。ストーム……いや、茜の悲鳴が聞こえた気がした。 ―――――― 一瞬にして永遠のような静寂が場を支配する。両者は微動だにしない。 この静寂を、先に破ったのは城之内だった。 「……へぇ。なかなかやるやないか」 ニヤリと笑う城之内。それに匠海も返す。 「ハァ……ハァ……ハァ……お前も……大したこと……ないな!」 荒い息を吐きながらも、確かに笑顔の匠海。その頬には、浅い切り傷がある。 「ふん。ゆうてくれるやないの」 さらに笑い返す城之内の頬にも……血が一筋垂れていた。 ―――――― *茜視点 (そんな……バカな……!) 私は、目の前の光景にただただ驚きを隠せないでいた。 理由は二つ。 一つ目は、あの武闘派で知られる、グループ内の急進派、城之内に傷を付けたこと。 もう一つは…… (どこであの技を……?あれはパクリでもなんでもない。古流武術、牙竜流(がたつりゅう)技の一つ、『千鳥』。) なんで、匠海君が…… 私は、難しい顔をしながら去り行く城之内を見つめていた。
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