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「さてと、俺の腰もそろそろ限界だし座るとすーー」
"ガシッ"
やっと、今日一日で蓄積された疲労を休めると思った矢先、水葉が俺の腕を掴んだ。
「……なぁ、俺も久々で疲れてるんだ。だから早くその腕を離して座らせてくれないか?」
「いや」
俺がそう言うも、掴んだ手を離そうとはせず、水葉は首を横に振った。
「私、そっちの席がいい!」
「…………はぁ?」
すると、水葉はそう言って掴んでいない手を俺の席の方へと指差す。
……おいおい、窓側に座りたいから俺の腕を掴んで邪魔してんのかよ……。
いつもなら席の場所なんて全然気にしないんだが、今は早くゆっくり休みたんだよなぁ。
「水葉。俺はもうこの通り座りかけだし、そっちまでわざわざ出るのもめんどくさいし、もうこのままでいいだろ?」
とにかく早く席に座りたいのと、少し疲れていたせいもあって、俺は水葉の言葉とは反対にそのままの席で座るよう水葉に言った。
「窓側がいい!」
「だから、窓側がいいのはわかったけど、それぐらいは我慢できるだろ?」
「窓側!」
「だから、少しぐらいは俺の言葉をーー」
「ま・ど・が・わ!!」
「あーもー!わかったわかった!どっちでもいいから俺はもう座りたいんだよ!」
「やったー!」
あーもう、こいつを言い負かすのはやっぱ俺には無理だ!
ずっと半立ちだった体を起き上がらせ、バスの廊下へと移動し、水葉に席を譲ってすぐ手前の席へと座る。
……はぁ、結局席を譲ることになるんだったら無駄な体力を使わずにさっさと変わればよかった……。
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