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ーーーーそれからは何事もなく、俺たちの他には前方におばあちゃんやサラリーマンなど2、3人がいるだけで、バスの中はゆるやかな時間が流れた。
「なんだか眠くなってきたな……」
静かすぎるせいもあって、バスの揺れと動く度に振動するエンジン音が子守唄のようで、とても眠気を誘ってくる。
けど、ここで寝ると寝過ごす可能性もあるし……、でもすげー眠いんだよな~。
…………ここは不安だけど、水葉に着いたら起こしてもらうよう頼むか。
「なぁ水葉。今から少しだけ仮眠をとるから着いたら……って」
「すぅ、すぅ」
横を見てみると、水葉は小さく寝息をたてながら眠っていた。
「ったく、いつもはあんなにうるさいのにこういう時は先に寝やがって」
その姿は普段のお喋りな水葉とは違い、とてもおしとやかに見え、童話に出てくる白雪姫のように見える。
「これじゃあ俺は寝れねぇじゃねぇか……。けど、まぁいっか」
起こして俺が寝てやろうとも思ったけど、その遊び疲れた子供のような無邪気な寝顔を見て、不思議とそのまま寝かしといてやるかという気持ちになれた
「そうだ、あの後結局買ってしまったあれを今のうちに……」
寝ている今がチャンスだと思い、ポケットに手を突っ込む。
付けさせるタイミングがなくてどうしようかと思っていたけど、………これでよし。
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