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「もし不具合があったら、いつでも言ってくれ。」
「大丈夫です。もう足に馴染んでいます。ずっと履いていたみたい。とても丁寧に作られているのが分かります」
子晏は頭を下げた。赤くなる顔をごまかすために。
「これは、同じ木で作った、普段履きだ。使ってくれ」
取り出したのは、側面に飾り彫りのある下駄。 伝統的な魔よけの幾何学模様が並んでいる。
底に、芙蓉の花が彫ってあった。
瑠花は吸い寄せられるように見ていたが、きっぱりと言った。
「これは、いただけません」
「そうか…、すまない。注文以外のものを押しつけるわけにはいかねえな。
気にしないでくれ、悪かった」
下駄を引っ込めようと手を伸ばす。
「いえ、気に入らないのではなくて…
もったいなくて」
きまり悪そうに瑠花が続ける。
「私は......職人の仕事は時間や手間を物に吸い取られる事だと思っています。
こんな素晴らしい仕事を、していただいて、あなたの時間を使わせたのが、もったいなくて…
すみません。」
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