6.鷺草と蛍火

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蛍火が、熱くなった。 一言、一音が熱を持って自分の心に宿る。 気づいたら言葉になっていた。 「これは礼だ。 自分は......今まであんたほど真摯な奴に会ったことが無かった。 仕事に......向かう姿勢が」 言葉を選ぶ余裕は無い。 伝わるかどうかもわからない。 「毎日少しずつ積もっていく油断のようなもの。」 そんなものはこの少女には無いと思いながら、続ける。 「まだ修行中 なのに、どこかで冷めていた。慢心していた。 あんたに、気付かされた。 それは......これからの仕事の糧になる。 だから」 下駄を作る間、機織り機に向う姿を思い描いた。 痛みを堪えて弱音を吐かない理由も。 職人としての、強さ。 それを小さな身体に宿している少女への尊敬。 信仰を形に留める仏師のような心で、気がついたら下駄を彫っていた。 二人も、二人の間の下駄も薄闇に包まれようとしていた。
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