7.柿

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河川のほとりで、星を見ていた。 朱姐のくれた小さな包みを開けてみると、干し柿だった。 親切な人だ。 甘味は、心を解す。 ......親方に嘘は言わなかった。 でも、強がった。 彼女に貰った紐を握り手の甲で目に蓋をする。 牛を繋ぎ止める布、か。 そう教えてくれた女の子ひとり俺は繋ぎとめられない。 だけどせめて忘れないようにしよう。 彼女に教えて貰った気持ちを。 明日は初心に戻る。 入門した時のように、一つ一つ丁寧に仕上げる。 彼女が先に 飛んでいくとしても、自分は一段ずつしか上れない。
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