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一瞬耳を疑った。
どうして…
「踏み込むの、つらいんだってな?」
流親方の恐ろしさを知った。
確かに機織りは足首に負担がかかる。
人の倍の速さで織る瑠花は尚のこと。
高さを調節しようと踵に台をあてたり、滑り止めをつけた。
それでも最近、以前とは違う。
親方にばれないようにしてたのに。
お見通しだったのだ。
弱みを見せたくない心も。
「あいつが損になることをするわけねえ。あんたが元通りになりゃ、他の奴にも下駄履かすだろ。だから殊更、恩に感じなくてもいい」
顔をあげる。
ああ、この人も。人を育てる人だった。
自分はどんな顔をしてたんだろう。
意固地で情けない顔に決まってる。
顔をあげ、
先導する行親方の後を追った。
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