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  分娩室代わりのリビングから摘まみ出され、お義父さんと散歩にでも行ってろ、だって。 あのー、私としては心細かったんですがー? お義母さんはかなりの上級者だったらしく、最後の踏ん張りどころで『なんてこった! ハゲてる!?』と。 かなり芝居がかった冗談で私を笑わせて、その間に手早く赤ちゃんを取り上げて後始末を始めた。 私はもう体力を遣い切ってたからぼんやりと見守るくらいしか出来なかったけど、私から流れ出た血から汗までさっさと拭いて、赤ちゃんも湯通しするように産湯に浸けていた。 最後に、疲労でまどろむ私に一言。 『元気な赤ちゃんを産んでくれて、ありがとう』 …………。 お義母さん、そのセリフは彼から聞きたかったです! 「シワだらけ……だな」 「アナタそっくり」 「……。……え?」 「うわ、二度見しないでよ。ホントのコトでしょう?」 「し、シワを伸ばす手術とか受けるべきか? その、ヒアルロンを注射するとか糸を通すとかあるらしいし」 「な、何でそーなるの?」 「そんなの、この子の授業参観で俺の顔が恥にならないためには必要な気がしてきたからだ。クソ、もう老化が進行し始めていたか」 産まれて、パパになって2時間でもうバカ親になりかけてる。 私はそんな彼がますます愛しくなった。 「おい息子、その金は孫のオシャレに回せ」 肝っ玉お義母さんは、大仕事の後でも平常運行でした。 * 「おとーさん、あやとりしよー?」 「お、お母さんとやりなさい。俺が撮影しとくから」  
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