MEMORY2/3

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  娘が幼稚園に上がる頃のコトだった。 「やだー、おとーさんとやるー!」 「そ、そんなにしたいのか……?」 「うんー!」 台所で夕飯を作っていると、娘が彼にあやとりのヒモを持って遊ぼうと言っていた。 が、指が太い彼は娘がやりづらいだろうと思ってやりたがらなかった。 元々、それは私が娘と出掛けるとき騒がないようにするためのモノだったから、ヒモも少し短い。 「お、おーい、遊んでやってくれー」 「ごめーん、今手が離せないのー! それともアナタがお夕飯作るー?」 「おとーさん、あやとりやろー?」 「ぐ……ぬぅ」 聴こえるか聴こえないかの小さな声で呻くと、彼は渋々娘と遊び始めた。 ときどき『こ、こうか?』と娘に確認を取っていた。 情けないなぁ、我が家の大黒柱は。 仕事で疲れてるとはいえ、私だって毎日の家事に忙しい。 夫婦2人で平等に娘と遊ぶべきだと思ったけど、撮影しようとスタンバイされていたビデオカメラを見て苦笑してしまった。 「とーきょーたわー!」 「あら、すごいじゃない。って、結局パパは参加してないのね……」 「んーん。んっとねー、ぎぶあっぷだってー」 よし、とっちめてやる。 「ち、違う! やり方をちゃんと知らないから今度あやとりの本を買って練習するから、今回だけ終わりにしたんだ。決して投げ出したりはしていない」 「ふーん? ねぇゆーちゃん、確かこの間折り紙の本と一緒にあやとりの本も買ったよね。パパに見せてあげて」 「げっ」  
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