MEMORY1/3

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  訓練士と補佐役が訓練センターから出ていく。 最初の目的地は1km先の自然公園。 訓練センターとは違って、外には周囲の目や中では起こり得ないトラブルだって起こる。 長く訓練を重ねてても、それにはきっと対応出来ない。 いつもの練習と同じようにアイマスクで自分の視界を暗くした。 「カイン、ゴー!」 * 訛りや方言。 日本語は地方によってたくさんの表現方法が採用されてしまう。 日本人同士なら何となく状況とニュアンスで理解出来るのかも知れないけど、イヌにそれを求めるのは間違ってる。 だから指示は全て英語。 ステイ。 ゴー。 ウェイッ。 他にも少しある。 そしてイヌには断続的に指示を出さなきゃいけない。 こんな風に。 「ゴー……ゴー……ゴー……っ、カイン?」 カインが私の指示に従わず、ぴたっと止まった。 あぁ、赤信号かな? 万が一の事態に備えた補佐役が『まずまずだな』とカインをホメていた。 偉いよ、カイン。 初めてでここまで出来るなんて思わなかったよ。  
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