悲しきピエロ

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尊だった。 「あ、尊さん、こんにちは。」 ヤバい!尊さんて催眠術が効かなかったんじゃなかったっけ! 松子は集団催眠を諦めた。 「槐の同級生のみなさんとお近づきになっておこうと思って。」 下手な言い訳だったが、それが功を奏した。 「槐は焼きもちやきだから、松子さんを特官には連れてこなかったよな。鬼の居ぬ間に、みんなに紹介するよ。」 尊が松子を紹介すると、特官の学生たちは大喜びで歓迎した。 「せっかくだから授業も見学していくと良い。みんな、案内してやってくれよ。」 尊の提案に、特官の学生たちは我先に松子の案内役を買って出た。松子はひらめいた。 「では、皆さんとお話したいので、数人ずつで案内お願いします。」 こうして松子は数人ずつ調べることが出来た。 最後に尊にお礼を言いながら催眠を試みた所、簡単にかかった。 尊さんがあの時催眠にかからなかったのはなぜ? 松子は調査事項とは別に探ってみた。何のことはない、尊は授業を受ける前日まで徹夜でレポートを書いていたため、講義が始まると同時に熟睡してしまったのだ。先に寝ている人間に催眠をかけるのは難しい。 私なら簡単だけどね。 松子の催眠術は無敵だった。
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