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今日は何日なんだろうか。腕に填められた特殊な腕輪を見詰めながら考える。周りは真っ暗で、廊下に繋がる扉の隙間から微かな光が漏れているだけ。
ここは製鉄工場の中の研究室。そして俺は研究材料。いや、鉄を産み出す機械といった方が正しいか。
研究者達は俺の超能力の出力を上げる為に毎日変な薬を投与する。全てはより多くの鉄を無償で手に入れてボロ儲けする為に。その為に俺に【鉄を操る能力】を人工的に植え付けた。
前の所持者は確か殺された筈だ。鉄を操るだけの超能力者よりも【創造系:鉄】の超能力を持つ俺の方が利用価値が高いから。
鉄を掘り出す必要が無くなり、その為の人件費や作業費がかからなくなる。
俺の人生と引き換えに……。
その時、扉の下の小さな扉が開いて何かが此方側に押し出された。
恐らくは食料。出力を上げる為の薬入りの。
飯を食い終わったらまた拷問が始まる。無理矢理超能力を使わされ、身体中が激痛を訴えても構わず超能力を使わされる。
俺の超能力なのに俺の為じゃなくて工場長の財布の為に。私利私欲の為に。
俺は酷い扱いを受けて激痛に耐え、工場長はテレビを見て笑いながら金を得る。
世の中腐ってる。
皆、俺を何だと思ってやがる。
てめえらの財布暖める家畜じゃねぇんだよ!
ニヤニヤする工場長を見ながら心の中で悪態を吐く。
怒りが全身を満たし、新しい出力強化の薬の効果を増大させた。
上がった出力は戻らない。上がった所が最高出力。
出力を測る装置の画面に表示された数字は
『500』
瞬間、装置が壊れると共に液体の様に蠢く鉄が俺の身体から激流として流れ出た。
俺は、やっと自由になった。
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