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  扉を開けたのは細い腕。 女は既に仮面を外している。 ポカンと開いた赤い唇。 それがなんだが淫靡な小動物に見えて、太い木の後ろでそれを覗いている男の心臓の鼓動は荒くなった。 ドベンネは白い仮面の下の唇を女の耳に近付けて、二言三言何かを囁いている。 今度は女の淫靡が仮面に寄る。 ドベンネは後ろへ下がり、小さく開いた女の赤い色にそっと、人差し指をあてた。 少しだけ顔を傾け、くるりと体を回して馬車の方へ歩き出した。 木の後ろの男の呼吸は荒いままである。 「あの女、ナラロッチの許嫁じゃねぇか」 ナラロッチの許嫁は腕を伸ばした。 小指と小指が触れた時、白い仮面がニヤケたのを、隠れたままの男は見た。  
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