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「ほう。きのう早いうちからロビーの隅でだらしなく酔い潰れていた奴か……」
ドベンネは朝の霧がゆっくりと流れる中を、濡れた草を踏みしめて男に近付いた。
腰のベルトに付けられた、サーベルの吊り具をガシャガシャと鳴らしている。
ドベンネを追い掛けていた男は目の前の若い貴族の挑発的な態度に腹が立ち、体の中のアルコールがふつふつと沸いて目の前が白くなった。
眩暈がした。
地に片膝をついて目を閉じてしまった。
男が漸く目を開けた時には、ドベンネのサーベルの先端が、青い仮面の前にあった。
丁寧に磨かれた銀の装飾具に似た輝き。
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