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ドベンネの仮面の下で、細い喉仏がゴクリと動いた。
次に動いたのは仮面の下の唇。ナメクジを連想させる。
「決闘‥‥ひゃっ、その手があったか! お前、当然立会人の資格は有るのだろう?」
二本のサーベルを抱いた、使用人風の男に尋ねた。
決闘は北部の貴族間において、正当な理由と立会人さえ居れば合法である。
ドベンネの指先が、使用人が抱える決闘用のサーベルに伸びる。
「おい待て。何故俺がお前と決闘などしなければならない!」
ドベンネに決闘を挑まれた男は慌てた。
決闘などという言葉は、普通の暮らしの中では、そうそう浴びせられるものではない。
辺りは今だに、濃い霧に包まれている。
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