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  「おっと、くそぉ」 白い幹の樹の並ぶこの場所。 小川になりきれない雪解け水の細い流れに、男は左足を入れた。 男がドベンネを追って歩き出して、友人から借りた上等な革のブーツを水で濡らすまでの間に、白い素焼きの仮面は四回、後ろを振り返った。 「ひっく‥‥ブーツは泥と、その水分の不快感を味わう為に有るんじゃ無い」 湿った紐は、ほどけにくい。 男は濡れたのブーツを脱ぐ事が出来ず、ドベンネ モリヒはサロンのある王家の別荘の玄関に立った。 ドベンネは自分の来た道を、また振り返っている。 これで五回目。 疚しさの数だけ、振り返っている。  
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