仕事

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 広いスペースに受付と書かれた小窓があり、中には診察室A・Bと2部屋があった。  奥までは見えないが長い廊下がありその先は何があるのかは目視出来ない。  ギィ…と開かれた扉に目線を向けると受付の隣にある扉から先程の和服の男が出てきた。 「履歴書」  とふてぶてしい態度だったけど手を出したので素直に渡し、椅子を指差されたので従って座った。  日向動物病院、受かればここが私の家になるのだろうか?  私は配置を確認するかのように周りをぐるりと見渡していた。 「あの…」  履歴書をジッと見たまま黙ってしまって早2分程が過ぎ流石に何か話さないとまずいかと思い声を掛ける。  そんな事お構いなしに履歴書を袋に戻し黙ってればイケメンの彼が私を見たから背筋がピシリと伸びた気分だ。 「ま、とりあえず住み込みでいいのか?」  と聞いてきて、それって!それって…お仕事貰えるって事?  そんな心の中でガッツポーズをしながらニッコリと笑って元気に答えた。 「はい!是非!」  と答えるとなんだかニヤリ?と言うような嫌な笑い顔を向けられ、私も顔が引き攣る。 「あんた背でけぇな」  ジロジロ見ながら、まぁ私ほど身長ある女少ないけどさ・・・。 「はぁ…まぁ、そうですね」  そうとしか答えられなかった。 「のわりに、胸が無い」 「は?」  なんかこの人何でこんな話し方なんだろ?仮にもここの仕事してるんだよね? 笑顔すらなしか!?  しかも胸って・・・女を求めるほど、困ってなさそうな顔だよね!? 「あー言い方悪いな、色気がねぇ」  あれ…これイジメ!? 「・・・もっと悪い気がしますけど?」 「そうか?」 「ええ、そうです」  いきなり胸が無いとか色気が無いとか…なんなのよ! 「この仕事には関係あるんですか? 胸が無いとダメとか、色気が無いと勤まらないとか」  もう半分ヤケだったんだと思う。本当は就職したいけど、ここまでバカにされるのも気に入らない。  そういう聞き方するならこっちだって聞いてやるわよ!くらいの勢いだった。 「まぁ、女は色気も大事だと思うがな」  折角受かりそうな面接だったのに、なんだかカチンと来てとんでもない事をこの口から零してしまった。
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