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「あの……そこまで言わんとも……」
「ほんっと馬鹿ですよね。心底同情します。何より、貴方たちは想像力が欠如しているんです。あの島を失ったら、どうなると思っているんですか!」
「…………いいじゃん、あげちゃえば」
「あの島によって、何割の排他的経済水域を確保できていると? あの近辺を活動拠点としている漁民の首を絞めるつもりですか?」
嗚呼、何だかこのやり取り、この間やった。デジャウ? それにしては、反論が筋金入りだけど。
ヒートアップしてきたらしい。
監視員は神経質そうにがりがりと頭を掻き交ぜ、「とにかく!」と金切り声を上げた。耳障りな……。
「いますぐ戦場に行って貰いますよ。こっちだって、人手が足りないんだ。更に手間までかけさせて」
黒いマントがふわりと翻る。一瞬視界が漆黒に塗り替えられ、キィキィ声だけが残った。
「貴方の派兵は、東部戦線です! まったくもぅ! 一番人が要る時に!」
現れたのは、巨大な黒い翼。その大きさにあっけに取られているうちに、髪は飾り羽に、マントは羽に移り変わる。
それだけではない。
身体全体が巨大な鳥と化してしまったのだ。
すげ。流石は夢世界。
鳥は大きく一声、一本が丸太程もある太い脚で、俺の肩を引っつかんだ。
鋭い爪が、肉に食い込む。
クソ、遠慮なしかよ、公務員。
黒い翼がはためき、突風が吹きすさぶ。
擦り減った靴底が地面を離れると同時、俺の身体もふわり持ち上がった。
柔らかな羽が密生する身体。
思わず取り付いた脚は鳥肌。
よくよく見ると、三本もの脚が生えている。
有り得ざる三本目の脚に、今俺は支えられているのだ。
闇を飛び抜ける。
吹き付けてくる風は強烈で、空いた口から鼻から無遠慮極まりなく入り込んでは、頬をぷわぷわ膨らませる。
鰓辺りの皮が震える感覚に、嗚呼やべぇ、少し太ったかも。
俺、肉ってあったんだ。
骨と皮のデクの棒は、学生時代からのあだ名だ。
刃物の如くぴかぴか光る爪は、脱臼するんじゃないか? って程に掴んでくるし、おいおい俺って、今から戦わなきゃならんのよな?
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