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不意に闇が消えた。
黒の洞窟と化していた視界が一気に拓け、眼下一面、蒼い空。
海かと思ったら、空だ。
見上げると、頭上に木々と土の大地が広がっている。
理解が追い付かない。
うわぁ、夢戦場って、天地逆さまになってるんだぁ。重力も上方向に……って、そんな訳ねえぇ!
ぐるりと視界が逆転する。
背面で飛んでいた巨鳥が、正しく飛びはじめたのだ。
風になぶられる身体が慣れてくると、ようよう辺りを眺める余裕ができる。
所々こんもりと盛られた山、走る巨大な溝、それはさながら迷路のようで、ちらちらと光が弾けていた。
遠く、微かな爆音が。
戦争だ。
戦争だ、戦争だ、戦争だ、戦争だ!
鳥は、中でも明々と連なる赤い帯を目指して飛んでいた。
あそこが前線らしい。
「貴方が配属となるのは、第二十一交戦隊、第十七分隊です。基準装備は、小銃が三に機関銃一。例外的に、小隊から貸与される迫撃砲が加わることもあります。……詳しくは、分隊長にでも聞いて下さい」
言い終わるや否や、全身をふわりとした浮遊感が包んだ。
心もとない、そう思う間もなく妙な高揚感と共に身体が落下し始めた。
ちらりと掠めた空の青。
先に見えたのは天高く、飛翔する大きな鴉。
そういえば、戦国武将で戦の席で飛ぶ鳥捕まえて、瑞兆だ――って……。
そこまで考えて、はたと我に返った。
いやいやいやいや! ちょっと待て。
あいつ……あのクソ公務員。
思いっきり人のこと、中空で離しやがったあぁ!!
思わず水をかく様に手を伸ばしたが、俺は鳥でもなければ某三代目の女好きモミアゲ大怪盗でもない。
わしわし空を掴んでも飛べるはずもなく。
Hay! 親愛なるアイザック・ニュートン閣下。
今僕は、あなたの偉大なる発見を身をもって体験しておりま……。
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