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「わぁお、特式迫撃砲! 雪風スペシャルね!」
「ふふふ、中隊長騙くらかしてかっぱらってきたの。但し、弾は一発。威力が最大のナナイチ弾。おかげで、こーんな狭いところでは使えない代物なんだけど、ないよりゃマシよね。泣いても笑っても一発のみよ」
「その中途半端さが、お前らしいな」
「なによぉ。持ってきただけ感謝してよ。馬もやられて、どれだけ自力で走ったことか」
「とにかく、大事に使わなくっちゃね。ご利用は計画的に、ってテレビのお姉さんもいってたよ」
「それは、借金の話な」
緊張を解すためか、男二人が妙な会話に興じている最中、マキネは大地に大きく弧を描く。書き添えられた数字に、頭上で爆発が起きる度粉塵が降り注ぎ、小さな舌打ちの音が響いた。
「マキネは、軍隊一のヒットマンなのよ。任せたら九十九パーセント完遂できるから」
安心させようとか、青年が耳打ちをしてくる。
「……やっぱり、反動の大きい雪風式ってのがネックね。一人が目暗まし用に小銃持って残して、二人を砲兵に戦線から出来る限り移動。一気に地上に出たら機動部隊に一発食らわせる。これしかないかしら」
「案外危険な綱渡りだな。小銃二丁と迫撃砲一発が頼みとは」
「仕方ないわ。軍馬もいない、戦車もない。キューベルワーゲンすら乗って行かれて、頼れるのはボロッボロの自分の足だけなんだもの。唯一の救いは、あちらさんが全滅寸前の三人分隊で保ってるとは思ってないことね。でないと、今頃とっくに攻め落とされてあの世逝きよ」
「そうかなぁ。マキネが怖いだけだと思うなぁ」
「何ですって?」
「マキネの怖さは、小隊一個分ってこと」
「……とにかく、今戦えるのは三人。武器は曲者揃いが三つだけ。今までと一緒よ。三人で何とかするしか……」
そこまで言って、ようやくマキネは俺の存在に気づいたらしく、きょとんと目を丸くした。こう見ると、普通の女性に見えるから不思議だ。ドロッドロなこと以外は。
「あんた、誰?」
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