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呟かれた言葉に答える前、口を開いたのはオスギと呼ばれた怪人ゴジラ。
「派遣兵だ」
マキネは訝しげに目をすがめ、「明日来る予定の?」と吐き捨てる。
「予定が早まったんじゃないか。派遣が三人も欠になっちまったんだし」
「それにしても、ひとりだけ? はっ! 馬鹿馬鹿しい。国は勝つ気がないんだわ。一番の戦線、四人で守れ、って」
「マキネは、一個小隊として数えてるんだよ」
「それは、もういい」
マキネが、よしっと腰を上げる。
「大杉隊長は、私と一緒に後方砲撃。新堂はここに残って、残弾撃ちつくしていいから。弾幕張れるだけ張るのよ」
「Yes,Mam」
吊れるだけ吊っていた弾倉を青年へと放る。
「あんたは……そうねぇ」
一瞬諮詢したマキネの口が開かれる間際、発砲が止んだ。ぴんと張り詰めた空気。
代わって響き始めたのは、強烈なスピーカーの雑音。次第に意味を成し始めると、それはそれは流暢に喋り始める日本語。
挑発と理性の喪失を目的とした情報戦の中でも初期の初期に取られるべき戦法だとは、後にマキネから教わったこと。
『あーあー、こほん。日本の雌狐サン、こんにちは。そこにいるのは分かっています。これまた卑怯に引きこもりですか?』
マイクの向こうで、忍び笑いが聞こえてくる。下品な。しかし……なんというか、効力がない。
「ヤバ、バレてた」
「あんだけ派手に登場してりゃあなぁ。ふぅむ、それにしても、単純な単語ばかり並べてやがる。多分、今回は怒らせるつもりだな。切れたところ正面から迎え撃つ気か。乗ンなよ。乗らんと思うが」
「誰がよ、あんな安い誘い文句」
「マキネ、オキツネ様だったの? 新堂知ってる、御稲荷さん、っていうのよ。葉っぱをお金に変えたり、油揚げだけで生きていけたりできるのね。だから、ニートでヒッキーでも生きていけてるのね、マキネ!」
「きゅう、って鳴かせてあげましょうか。きゅうって」
「もう、マキネは冗談が通じないよね」
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