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散乱するゴミにゴミ。
時々雑ざる衣類、そしてまたゴミ。
一応生ものはすぐ処分に出している筈だから不衛生とは……いや、言えるか。
埃は二ヶ月近く掃いていない。
男は、再び次の間に目を移した。
あどけない少女の姿は、間違っても伴侶がいるようには見えないこの一国一城に相応しくない。
「俺も最後まで嫌だって言ったんですけどね。いや、間違いは起こさない自信がありますけど、ほら、親御さんにとっては不安でしょう? 大事な大事な娘だし。姉貴、海外旅行に行くんだとか言いやがって。教授の方も、俺の人となりは知ってるから、預かってくれるなら構わないとか言っちまうしなぁ。でも、ほら、世間はそうはいかないでしょ? 保護者が許してもねぇ……」
あくまで抵抗したんですよ、と口にし続けるのは何だか言い訳じみて後味が悪い。
いや、実際したんだけどね。
したんだけどね! 実際。
いらないことまで喋っている自覚はある。
しかし、事実なのだ。
残る後味を打ち消そうと、更に饒舌になった真実は、ほろほろ零れて後ろめたい言い訳になる。
後ろめたい者は、聞いてもいないのに饒舌になるものだ、とは、当の教授談。
あーもう、まんまそれじゃん。疑う視線もなくならないし。
三度言おう。これは真実である!
いつもよりお喋りになっているのは、間違っても幼女誘拐監禁疑惑なんかで通報されたくないからである!
己しか知らぬジレンマに内心うごうごしていると、男はふぅんと一息、
「人となりは知ってても、生活環境自体は知らなかったんですね」
おぃ、あえてそこかよ。
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