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「ミヅキちゃん、今年はお祖父ちゃんたちじゃないのね。誰と一緒なの?」
「えっと……イトコのお兄さん」
突然のことに驚いたのか、少し言葉を探った少女は、それでも散々吹き込んだ設定を覚えていてくれたらしい。
くすぐったそうに口にする姿は、胸を鷲掴みにされるほど愛らしいのだが、いかんせん。
俺はこの子の家族でもなければ、イトコのお兄さんでもないのである。
もやもやと渦巻く違和感をぐっと堪えて、「はじめまして」と挨拶するにとどめた。
思わずこまごまと細部の細部まで作り上げた設定を語ってしまおうかと思ったが、いやいや、だめだろ。
マキネだって、『人は嘘を吐くとき饒舌になる』って言ってたし。
基本、子供は好きである。
友達の親戚から、怪しいお兄さんになるのだけは御免こうむりたい。
この子の為にも。
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